どーもみなさん。
夏は良い思い出がありません。
でも、青春のワンシーンを思い描くと夏の景色が多いです。
みなさんはいかがでしょうか?
青春といえば、高校時代。ボクはTHE BOOMがそのすべてでした。
仲間も恋人もみんな大好きで、THE BOOMなしにボクの人生は語れません。
では、今日は思い切ってその青春を短編小説風に描いてみました。
ずいぶんと長文になってしまいますが、人の青春を除き見するような感覚でお読みください。
登場人物は恋人の「ミヤザキさん」以外は本名です。
香川の友人たちよ、許可なく実名でここに書いてしまってごめーんね。
それでは、ごきげんよう。
「ボクたちのTHE BOOM」
「あ、スイカ泥棒や!」
そうボクが言うと、
「え?どこどこ?」
と、白々しく立ちあがる津崎。丸々に太ったお腹をスイカに見立ててそれをかかえ、ヒョッコヒョッコ滑稽に歩く。
「コラー、待て待て~」
と、その津崎をセリフ棒読みで追いかける大根役者は津崎の嫁。そして、盛り上がる御座敷。
今夜はスムルースの高松DIMEのライブのあと、地元男女7人で集まって宴会中。お決まりの津崎のしょーもないギャグ「スイカ泥棒」の披露も今日これで何回目になることだろう。
津崎のオモシロさは歳をとるにつれてアップしていくが、嫁も嫁だ。よくもまあ、こんなオモロイ嫁がいたもんだ。この嫁は、本屋でエロ本を読んでいる全く知らない他人を自分の旦那と思い込み、ふざけてずっとその他人の耳元で「ゼー、ハア、ゼー、ハア」と言い続けたという伝説を持っている。相手からしてみたらとんでもない痴女の登場となったことだろう。
「いや~、しかし今日のライブはよかったぞ。ぐっときた」
痴女がオッサンのように感想を言ってくる。
「トクダはズボンがピチピチすぎるけん、ダメ」
スイカ泥棒はこう言うがボクには「良いライブだった」に聞こえる。
「ミヤには程遠いけどな」
親友大川が口をはさんでくる。
「ミヤじゃない!宮沢さんと呼べ!わかったか!」ボクは諭す。
「おう!おう!1回会っただけでもう知り合い気取りやんけ」大川がからかってくる。
「あたりまえじゃ。ワシがここ10年で自慢できるんは2つだけじゃ。ひとつは、阪神戦で始球式をしたこと、そして、もうひとつは我らがヒーロー宮沢和史に会えたことじゃ」
「えーのう」池渕が反応する。
池渕は最近結婚して名前が変わったはずだが、どちらさんになったのか思い出せない。隣にいる池渕の旦那は、まるでどこかの地方の低予算で作られた「ゆるキャラ」のようで、「ヒコニャン」とあだ名されている。ほとんどしゃべらないのに愛嬌がありすぎてみんなの人気者だ。
「夏やったけん、宮沢さんノースリーブスやったんやぞ。間近で生ミヤザワノースリーブスじゃ」ボクの良くわからないアドリブの自慢。
「う~わ、えーのう」なぜか反応する池渕。
「ほっ」小さく反応するヒコニャン。
ふと周りをみれば大川も結婚しており、どこぞの雑誌でモデルをやっていそうな美人の嫁を連れてきている。
津崎も大川も池渕もみんな結婚し、会社ではそろそろ責任の重いポストについて働いているのだ。そんな中、独身で貧相な経済力が持ち味のボクは一人、テーブルの誕生日席に座って若かりし頃、高校時代を思い出していた。
ボクの高校時代、クラスで圧倒的に人気があったのがTHE BOOMだった。カラオケにいくのもTHE BOOMの曲がたくさんあるカラオケボックスを選び、歌うのも「過食症の君と拒食症の僕」などのシングルじゃないアルバム曲を好んで歌った。池渕は女子らしくJUDY AND MARYの曲を歌いつつも、途中で必ずTHE BOOMの曲を歌う。キーをずいぶんあげないといけないので変な曲に聞こえたが、名曲は高く変なキーで女子が歌っても名曲なのだ。
当時カラオケはそう頻繁にいけるところではなく、基本的には学校の帰りに自転車に乗りながら大川と歌うことが多かった。「ないないないの国」や「なし」や「ルティカ」を歌う大川はミヤの特徴をよく捉えていてとてもうまい。そして、ボクは山ちゃんのコーラスパートでハモるのが好きだった。
「ワシらもバンドやろうぜ」
そんなことを言ったものの手元にあった楽器は、どこかから大川が手に入れたエレキベースしかなかったので「都市バス」のワンフレーズをなんとなくコピーしてそのまま流れ解散となった。「パステルネイビー」という野球部のユニホームカラーから付けたダッサダサなバンド名だけが悲しく浮いていた。
津崎は頭が良かったので「評論家」の立場を貫いていた。「奥田民生はお父さんが議員で…」とか「ミヤの奥さんは光岡ディオンでアベBのシングルに声で参加してて…」とか、ボクのほとんどの情報源は津崎だった。だいたい中学生のころの本棚に「沈黙の艦隊」が並んであったのは津崎ぐらいだろう。
そして、THE BOOMは、ボクらの友情を深めるどころか、ボク自身に大恋愛を運んでもきてくれた。
「島唄」の爆発ヒットで今年の高松市民会館のチケットはとれないらしいとの情報から、学校で一番のブーマーでありファンクラブ会員でもある女子にチケットをお願いしようとなったのが始まりだ。その女子はミヤザキさん(仮)と言い、彼女自身「ミヤ」と呼ばれるところがかなり気に入っているような「人生がTHE BOOM」の人だった。彼女との初対面は、ライブ当日の開場前の行列で、赤いベレー帽をかぶってひときわ目立って思えた。ボクらはTHE BOOMの話で盛り上がり、一気に恋に落ちた。いや、ボクだけが一気に高熱を出しただけだったような気がする。長い長い恋のインフルエンザ。
とにかく恋のパワーは自分をすっかり変えてしまう。
彼女の気をひくためにギターを必死になって覚え「中央線」を歌えるようになった。恥ずかしながら彼女宛てに曲も作った(コード進行は『中央線』と同じ)。「愛のかたまり」に出てくる「環七」の意味がわからない彼女のために行ったこともない図書室で広辞苑をひいた(四国の人間に「環七」が「環状7号線」のことだとはかわかるはずもない)。そして坊主頭の自分のことをミヤと同じ髪型と言い張った(「FACELESS MAN」当時)。
そんなボクの大恋愛も何カ月かで終わりを迎え、彼女には違う彼氏ができた。違う高校に通う「高松の宮沢和史」と言われたほどの男前らしい。ボクはこのときほど自分が男前じゃなかったことを恨んだことはない。
「顔が無理なら心をミヤザワにしてやる」
そう思ったかどうかは、今後の人生の大きな分岐点になったと思う。
そのあとズルズルと3年間くらい彼女のことを忘れられなかったのだけど、このときの大恋愛と大失恋をささえてくれたのもミヤの言葉だった。
いろんな人に削られて けむりになって消えちゃった
なにもない 愛のかたまり
ありがとう ありがとう 忘れない
写経というのがあるけど、当時のボクはなにがどうなってそうなったのかまったくわすれてしまったけど、この「愛のかたまり」の歌詞を何度もノートに書いている。
写ミヤ。
「愛のかたまり」をノートに書き写して気分を落ち着かせた10代。今思えばこれはオモシロイ。
そして、その後大学生になり、やっと彼女に踏ん切りをつけようとボクが取った行動は、さらにオモシロイ。
付き合っていた当時、彼女から唯一もらったものが、ファンクラブ会員じゃないと手に入らない「虹が出たなら」のオルゴールだった。そして、なんと彼女との思い出にさようならするために、大事な大事なオルゴールを川に投げ捨てることにしたのだ。
思い出よ、さようなら。10代よ、さようなら。
若いボクなりのロマンチシズムなのはわかるけど、川に投げ捨てるなんてマナー違反の環境破壊以外の何事でもない。
もしもタイムマシーンが1回だけ使えるなら、ボクはマンモスを見ることや関ヶ原の戦いを見ることや未来にいけることも選択せず、真っ先にこの時の自分に会いに行って「こういうものを川に捨ててはいけません。未来はこうなっている」と言って、アルゴアの「不都合な真実」を手渡すことだろう。
香川の超マイナー2級河川「本津川」にそのオルゴールは今でも沈んでいるのだろうか…。
かくしてTHE BOOMがないと今のボクは存在しない。
ボクが今、こうしてプロのミュージシャンになりアルバムを作る時、いつも思うのは「同い年のころの宮沢さんは何をしていた時だろう」である。今のボク年齢のときTHE BOOMは「LOVIBE」を作っていた頃かあと思いながら今回もレコーディングやリハーサルに挑んだ。
生意気にもそれが自分の目標になる。
高校時代だけじゃなく音楽業界に飛び込んでからもTHE BOOMの縁は続いた。熱心なブーマーがボクの歌詞にもTHE BOOMと同じようなシンパシーを感じてくれることがあったのだ。
まだまだスムルースにはTHE BOOMのようなヒット曲はひとつもない。
何度も諦めそうになったけど、やっぱり気がつけば曲を作っている自分がいる。
すこしでもヒーローに追いつけと。
いろんな人に削られて けむりになって消えちゃった
なにもない 愛のかたまり
ありがとう ありがとう 忘れない
「愛のかたまりにはなにもない」
30代になって気づいたことだけど、これって仏教でいうところの究極の悟りじゃないですか。
こんなこと20代で歌える天才にボクは出会えて幸せです。
ふと気づけば宴会は、とんでもなくハイテンションになっている。
津崎夫妻は、持ちネタ「スイカ泥棒」を居酒屋の店主をわざわざ呼びつけて披露し始めている。何度見てもオモシロイ。
大川夫妻は、それをバカにして笑っている。相変わらずの毒好きだ。
池渕夫妻は、今気づいたけどガチャピンとムックのように見える。夫婦そろって愛くるしい。
THE BOOMで深まった友情、THE BOOMで知った恋。出会い。別れ。
これがボクにとってTHE BOOMが青春そのものだった理由である。
きむきむ より:
マイナー河川もよくわかりました。地元密着型ですね(笑)徳田さんの友達にもかなり会いたくなりました。(笑)やっぱり徳田さんが作った音楽や文章は大好きです。
宮沢さんにオリーブはまちの話されて反応はいかがだったでしょうか?私はまだオリーブはまだみたことがありません。
メリア より:
長い長い恋のインフルエンザを解いたのは捨てたオルゴールだったのですね。
自論ですが、夏から始まった友情や恋は儚い気がします。
夏のあの雰囲気が、一気に盛り上がらせる気がするのです。
季節の魔法なんでしょうかね。
みどっこ より:
写ミヤ…ウケました(笑)
私も好きなアーティストの歌詞をひたすら紙に書いたりするとこがあります。
私の場合はスムルースなので…写スム?笑
確かに…何故だか心落ち着きますねw
越後ねこ より:
スムルースも大好き、BOOMER歴も21年です(^o^)
大好きなMIYAさんを、大好きな徳田さんも好きで、すんごく嬉しいです。
環七を新潟~東京高速バスで初めて横切った時には、
「これがあの環七!!」と興奮しました。愛のかたまり、好きです。
MIYA THE WORLD に大好きなお二人が出演された時は、感動!!
先日「光」ツアーに行きました、
歳を重ねたTHE BOOM もすごく素敵でした。
スムルースも、素敵に歳を重ね、素敵なバンドでいてください(^_^)/
ふぅすけ より:
津崎さんが「ともだちファミリーレストラン」の中に出てくる「親友スイカ魔人」のモデルなんでしょうか?
3年間も、人を思い続けるってスゴいパワーですね
そんな人と結婚できたら幸せだろうなぁ
匿名 より:
かわなか より:
私も高校生のとき、宮沢さんにそっくりな
部活の後輩に恋をしたことがあります。
それはもちろん、宮沢さんにそっくりだったから!
ロココ+ より:
私が通ってた短大の学園祭に、THE BOOMが来てくれました。
それは今でも、最高の想い出です。
私は今でもカラオケに行くと『星のラブレター』を熱唱します。
THE BOOMの好きな歌はたくさんあるけれど、最後はなぜだか『星のラブレター』に行き着くのです。
ハーモニカもいっぱい練習しました(笑)
宮沢さんの作る曲は、歳を重ねる毎に、ま〜るく優しくなってきてるように感じますが、歌う魂は更に更に熱くなってる気がします。
私も変わらず宮沢さんが大好きです。
でも、それに匹敵するくらいに……イヤ、越えちゃうくらいに、スムルースも大好きです。
大好きな曲って、聴くだけでその時々にタイムスリップ出来ますが、スムルースの曲もそんな大切な曲達の仲間入りをしていますよ。